「郊外へ」

[堀江敏幸論のために]
 あとがきにあるように、「発表当時、本書はいわゆる留学体験をつづったエッセイ、もしくは紀行文として読まれ、書評などでもそのように扱われることが多かった」この作品は、「完全な虚構」であると述べられている。「私」は、「『郊外的』な立ち位置の代弁者にすぎ」ず、「実体験を語っていたならば、それは既視感の反復に終わり、なにかに『ついて』言葉を綴ろうとしていたら、郊外『論』になってしまっただろう。」という虚構の存在であるという。
 こういう作品を他にも読んだことがある。谷崎潤一郎の「吉野葛」だ。この作品も、義経静御前を素材に、主人公は吉野川を遡上していく。

郊外へ (白水Uブックス―エッセイの小径)

郊外へ (白水Uブックス―エッセイの小径)