私自身へのインタヴュー(48)

四つの恋の物語 (集英社文庫)

四つの恋の物語 (集英社文庫)

−読了されたようですが。感想はいかがですか。
森瑤子さんの作品を読んだのははたしていつだったか。おそらく20年以上前だったように思います。この作品は、晩年の作品のようですが、エロスに満ちた作品ではないかと感じました。セックスがしたいということを、ごく普通の人々が、案外自然にかつ上品にセックスをしてしまう光景は、それほど頻繁に目にする光景ではないような気がします。現実にはよくあるのかもしれないけれども、小説という形態を取る場合には、どちらかというと奇異な組み合わせやシチュエーションを設定したうえで、非現実的な、非日常的な空間を設定したうえで許されるもの、といった暗黙の了解があるような気もします。
−この作品ではその逆に、ごく普通の人々が、ごく自然に、しかも上品にセックスしてしまうのですね。
そうですね。四つ目の「コシ・ファン・トゥッテ」がとくに印象が強かった。二組のカップルが、それぞれの相手をたがえてセックスしてしまう物語であり、若干無理な設定にもかかわらず、最後まで読んでしまうのです。結末があいまいなまま放置される感じも嫌いではありません。森瑤子作品から「結婚」という形態にこだわらないセックスのあり方について考えてみたいと思うのです。