宮部みゆき「魔術はささやく」

魔術はささやく (宮部みゆきアーリーコレクション)

魔術はささやく (宮部みゆきアーリーコレクション)

 宮部みゆきの初期作品を読破する計画の第一冊目。
 ここで「はまぞう」を使ったところ、今年の年初に新装版が出版されていたことが分かった。それで、ここに画像を引用した。もちろん文庫版もある。ちなみに私は文庫を読んだ。
 もしかして、宮部みゆきブームを起こそうという動きがあったのだろうか?こまめに本屋に通うこともなくなったのでそういう空気はまったく分からない。良く見ると「earlry collection」とあるではないか。まさに「初期作品」!!きっと、宮部みゆきファンの新潮社編集部の誰かがいまがそのときと出版にこぎつけたのだろう。
「楽園」が出版されたときに、「模倣犯」を先に読んだ方がよいというある人の薦めに素直にしたがってしまったがために、足掛け1年近くかけて「模倣犯」を読み終えることになった。(だからまだ「楽園」は読んでいない。)「模倣犯」から入ってしまった不幸(稀有な?)な私のような宮部みゆきファン(まだ、にわかファンの域だが...)を量産するよりも、ぜひこの「魔術はささやく」から読んでもらった方がはるかに宮部みゆきとの出会いとしては望ましいだろう。

藍色さんのページ http://1iki.blog19.fc2.com/blog-entry-674.html


(以下は、作品を読む前には決して読まないでください。)

 この作品は、あきらかにひとりの主人公(日下守)が固定されていて、「模倣犯」とは異なり、オーソドックスな構造になっている。父が行方不明(っていうことにしておく)、母が亡くなったことを機に、伯母の家にやっかいになった(捨てられた)守が、図らずも身に付けた(これが不可欠なんだ)金庫破りの技術を活かしつつ様々な難局を乗り越えながら父親を見つけ出す(実は他人だった...)までを描いた、まさに「貴種流離譚」を基調にした物語が展開される。非常に読みやすい一冊であった。男性である私としては...。
 私の知る限り、宮部みゆきを一番好きな作家としてあげるのは若い(私より若いということ。10代の人とは交流がありませんので、20代から30代という感じです。)、それも女性である。女性なら「模倣犯」からの方が良いのかな...、と直感的にはそういう気がするが、いずれにしても作品の中で描かれる女性の多くは主体的であったり自立的であったりする女性ではない。そう、女性が非常に危うい状況におかれている。幸せに子育てにいそしむ専業主婦は一切登場しない。これはある意味不気味な空間である。不気味ではあるが、いまの日本の状況(この表現は恥ずかしい!)では、どちらかというと一般的な社会というものに対する感覚としてはごく普通な感じなのかもしれない。

 共働きの女性がいかに子育てにおいて負担を強いられているかということに関心を持っているのは、当事者である女性(その配偶者は意外に子育てに負荷を感じない輩が多いような気がする。)と選挙前の政治家ぐらいではないかと思う。もちろん、少子化をいま最大の課題であると認識してボランティアとして託児所で活躍している団塊の世代の先輩たち(ここでは女性のみが活躍している[はず])はこれからもっとも日本を救うひとたちであろうことは私も感じているし、応援していきたい。
 美貌の新進日本画家、松井冬子の作品に接するとき、そこにも「幸せに子育てにいそしむ専業主婦」の存在は記憶のはるか彼方に駆逐されてしまっている。(と、いってみたものの、まだ直接絵をみたこともないし、松井冬子さんに会ったこともないのです。NHKの特集をみただけです。対談していた上野千鶴子のおばさん度が、横にいる松井冬子のおかげで加速級数的ににその度数を増してしまっていたことに深い哀しみを感じました。)
 子育ては基本的に女性にまかせるということもまだまだ崩れてはいないとはいうものの、まだ小学校にもあがっていない5歳の少女を、仕事があるから、働いているからといって、勝手に友達の家にいかせたり、映画館におきざりにしたり(数日前のこのブログ「ごはん屋さん」参照)する感覚というのはすでに社会的に認知されているようである。それは、それで良いのだろうか...。
 いろいろ結論めいたことを書き連ねることになりそうなのでここで止めます。いまは、その違和感だけをここに置いておきたい。もしかしたら、宮部みゆき論のためのひとつのキーワードになりうるかもしれないから。

痛みが美に変わる時~画家・松井冬子の世界~ [DVD]

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 おっと。これもまた商品化されていた!!恐るべしNHK。(おそるべし「はまぞう」効果)再放送も含めてなぜか二度みることが出来たので私は買わないが、見ていないひとはちょっとみておいた方が良いかもしれない。今年の日本美術界の10大ニュースの上位を占める作家と番組だろうから。(かなりミーハーだが。)

 昨日から「村上春樹にご用心」を読み始めた。アマゾンで目次だけを見て、これは読むしかないと思ったが、やっぱり読んでよかった。まだ途中だけど。しかし、この人は蓮實重彦に直接教えを受けたはずだと思うのだがすごく毛嫌いしている(ポーズか?)。なんでだろー(byタカ&トシ)(いやいや、テツ&トモ[すでに死語か...]だった。)