私自身へのインタヴュー(37)
−映画「グラン・トリノ」はいかがでしたか。
良かったですよ。好きな映画のひとつになりました。
クリント・イーストウッド演ずる主人公のコワルスキー(ポーランド系米国人)の設定がすべて。二人の息子たちとの関係と隣家のアジア人との関係との相対的な関係性の逆転。
内田樹さんのブログ『内田樹の研究室』に関連する表現を見つけました。
・・・(引用開始)・・・
私のアメリカ論の中心テーマは「日本人はアメリカ人の気持ちになることができない」というものである。つよい心理的な抑制がかかっていて、私たちはアメリカ人に共感することができない。いや、私はアメリカ人のことがよくわかっている、とおっしゃる方も大勢おられるであろう。彼らが言っているのは、「外から見たときの」ある種の「パターン」についてである。私が訊きたいのは、そういうものではない。アメリカの国民的なアイデンティティーの中核部分を形成している「西漸の情熱」「旧大陸への憎悪」「武装権」「キリスト教原理主義」「先住民虐殺事実の忘却」「ニューカマーへの組織的迫害」「女性嫌悪」といった一連の行動を生み出す「胎」のようなものに私たちの想像力は届くのか、ということである。この「アメリカ的なものの胎」に触れることをめざす研究者は私の知る限りほとんどいない。ほとんどのアメリカ専門家はすでに制度化し物質化した「アメリカ」については詳しい。けれども「アメリカ」をそのようなものたらしめた本源的な力については言及しない。それは富士山の造型や植生や登山ルートについては詳しいが、富士山をそのようなものたらしめた地下のマグマの状態については何も語らない人に似ている。その「胎」のごときものの蠢動を感知し、それに部分的に共振できるような身体をもつ人の語る「アメリカについての言葉」を私は聴きたい。
・・・(引用終わり)・・・
“アメリカの国民的なアイデンティティーの中核部分”に日本人である私たちの想像力は届くのかということ、それこそが映画「グラン・トリノ」のテーマになっているといえるのではないでしょうか。
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