「カウンセリングの実際問題」河合隼雄著

カウンセリングの実際問題

カウンセリングの実際問題

 敬愛する放送大学の大場先生の講義で、必読書として薦められていたので手に入れた。初版は1970年の8月。かなり古い本だが、公演の記録を起こしたものであるためか、非常に読みやすい。しかも、内容はとても具体的で、実際のカウンセリングにおける経験がちりばめられている。
 カウンセリングに関する本は数多あるが、プライバシーの問題もあるようで、具体的な内容が書かれていることが少なく、読み応えのある本に出会うことはそれほどあるわけではない。しかし、この本は読みやすさとは逆に、その内容は相当に深い。
 河合隼雄というひとは、飄々としていて、男前でもないしなんかうさんくさいひとやなあという感じがしていたが、30年前にこれだけの内容の本を出版していたという事実にあらためて驚いてしまう。
 河合さんについては、大和西大寺駅で見かけたり、文化庁のロビーで座っていたときに私の目の前を秘書らしきひとと通り過ぎられたことがあったが、直接お話ししたことはない。そして、残念ながらもうそういう機会を持つことはできない。
 この間、難波のジュンク堂に行ったら、ユング研究所に提出された日本の神話をテーマにした論文の日本語訳が出版されていた。ご子息が同じ仕事をされているようで、この本の出版にも関わっておられるようだ。ちょっと欲しいなと思ったのだが、我が家に積んである数多の本のことを思うと、とてもレジまで持っていくことができなかった。