商品開発(33)

 文章で飯が食えたら。そんな思いを持つ以前にであってしまったのが蓮實重彦の作品。「表層批評宣言」で強烈な衝撃を喰らい、「陥没地帯」でことばを失い、ただその場に立ち尽くすほかないところまで追い込まれたのは、はるか二十年以上前のことだったろうか。
 手に入れたまま、まだページを開くのは先の楽しみにしようと思っていたはずだったが、ふとゆうべ床につく前に少しだけ読んでみようと思い立ち、二つの章を読んだ。
 内田樹に対して、たいそう怒っておられるのだが、このような怒り方はあまり読んだことが無いように思う。蓮實重彦の著作をすべて読んだわけでもないのだから、えらそうなことはいえるわけもないのだが、とにかく、この怒り方は決して優しいものでもないし、いやみったらしいものでもない。ただストレートに怒りをぶつけている、そういう感じがする。まったく関心のない相手に対しては、決してこういう怒り方はしないはずだし、逆に、愛情さえ感じないでもない。
 内田樹も東大仏文出身なのだから、恐らく蓮實重彦にフランス語を学んだ可能性もないとはいえないが、ネットで検索したところどうもそういうことはなさそうだ。やれやれ。

随想

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